Google Quantum AIは、量子コンピューターで最もコストのかかる要素の一つを、はるかに安く作る方法を実機で示したと発表した。2026年10月15日付のブログによると、「マジック状態培養」(magic state cultivation)と呼ばれる手法により、Willowプロセッサーでのエラーが約40分の1に減った。成果は科学誌Scienceに掲載された。
マジック状態とは
量子コンピューターで役に立つプログラムを動かすには一通りの演算が必要で、その一部は「マジック状態」と呼ばれる特別な入力に頼っている。研究者たちは2004年の時点で、エラーの少ないマジック状態を作ることが大きなボトルネックになると予測していた。
Googleによると、高品質でエラー訂正されたマジック状態を作るには膨大な資源が必要で、マシンの能力の最大95%がその生成に使われるとの試算もあった。しかも一度使うと再利用できない。
培養の仕組み
この考え方は、GoogleのCraig Gidney氏、Noah Shutty氏、Cody Jones氏による2024年の理論論文に由来する。培養はフィルターのように働く。ノイズのある状態をチップの小さな領域に入れ、綿密に調整された測定を繰り返して欠陥のある試行を捨て、非常に純度の高い状態だけを残す。
研究者のEmma Rosenfeld氏は、電子機器のドリフトや温度変化による実験室のノイズが、従来の測定手法を狂わせていることを突き止めた。チームは制御を強化し、培養そのものを使って測定する新しい評価手法を考案した。
成果
Googleによると、Willow上でこの手法は次の結果を出した。
- 培養しない場合と比べてエラーを約40分の1に削減
- 論理忠実度99.99%のT状態を生成
- 純化した状態を距離3のカラー符号から距離5の表面符号へ移すことに成功
読者への影響
今すぐ買える製品が変わるわけではない。実用的な量子コンピューターはまだ先の話で、Googleも大規模での実証や多くの技術課題が残っているとしている。今回の意義は、実用的でエラー訂正された量子コンピューターに必要な規模とコストの見通しを下げた点にある。化学や材料研究などへの応用が、従来の予想より少ない量子ビットで実現する可能性がある。





